江原道
料理の特徴 : 塩辛や肉類の代わりに 、いわしや貝を利用し味をつけるので、味が素朴で淡泊な特徴がある。
代表食べ物 : じゃがいもご飯、マッククックス、黄太料理、イカ焼き、イカの腹詰 、オルチェンイムック、山菜、蔓人参生彩、どんぐりムック、蕎麦豆腐、じゃがいものソンピョンなど。

春川(チュンチョン)のマッククックス()蕎麦麺
蕎麦麺は名実ともに由緒深い江原道を代表する麺である。特に春川のマッククックスは蕎麦麺の代名詞のようになっているほど全国に風靡している。全国各地の蕎麦麺屋の看板には必ず「本場の春川マッククックス」と書いているのだから、おして知るべしというところ。この「マッククックス」というものは、特別な手の込んだ麺ではない。一言でいうなれば蕎麦麺に醤油、ゴマ塩、唐辛子粉(または唐辛子味噌)、ゴマ油、酢などの薬味をかけて、肉片(チャーシュウ)、葱、キムチを刻んで麺の上にのせて、ビビンパのように混ぜて食べるか、肉汁(スープ)をかけて食べる一種の冷麺である。「マッククックス」の麺玉を作る時、蕎麦粉に片栗粉を混ぜるが、これは蕎麦粉だけでは麺条が折れてしまうので、弾力を与えるためである。この片栗粉と蕎麦粉の比率を加減することによって蕎麦の味がきまるという。蕎麦麺は熱湯の中でゆであげたあと、取り出して冷たい水の中に入れて冷ましてから使うのが特徴の一つである。これに薬念(ヤクニョム・薬味)と汁、さらに飾りをかねた具(ゆで玉子など)、つまり麺にそえる豚肉、キムチの味が麺屋の名声を左右するのである。だし汁は牛肉を長時間にわたって煮た汁に醤油と調味料で味をつけたもの。そえる肉片は豚の三枚肉水煮して脂をとったあと、一切れか二切れを盛りつけるのが普通である。禁猟となる前は、雉肉と雉肉でとっただし汁を用いたが、現在ではこれが牛肉のだし汁と豚肉に代わったまでの話。「マッククックス」は咸興冷麺(ハムフンネンミョン)のように汁を全然入れないで、汁代わりに唐辛子味噌をどっと入れて混ぜご飯式に混ぜて食べるものと、平壤冷麺式に冷たい汁を注いで食べる二種類があるが、いずれにしても冷麺に違いない。

平昌(ピョンチャン)のオルチェンイムック(おたまじゃくしのトコロテン)
「おたまじゃくしのムック」は、蛙の子であるおたまじゃくを材料にして作ったものでないことだけは、前もってお知らせしておく。これは、江原道の特産物であるトウモロコシで作ったこの地方固有の「ムック料理」なのである。旬は八月の初めから、十月の初めにかけての間だという。トウモロコシの実が最もひきしまって固くなった頃のものを採ってきて作るのが、最上の味。というのは、トウモロコシ特有な香ばしい風味を味あうことができるからだそうである。ところが、この「おたまじゃくしのムック」の作り方を見ると、これ、いとも簡単そのもの。まず、トウモロコシの実をとって(乾いていないもの)きれいに洗い、ひき臼(ウス)かミサキーでひいたものを、目の細かいフルイにかけて、それを水の中にしばらく浸けておくと、これが沈澱する。それから、うわ水を捨てて、トウモロコシの沈澱したのを取り出し、鍋に入れて火にかけ(水を少し入れる)、糊を作る。糊状になったとき、前もって用意しておいた冷たい水を入れた容器の上に、小指ぐらいの大きさの穴をあけたバガジ(ふくべ)を置き、その中に、熱い汁をたらすと、穴を通った液体が、冷たい水の容器にポトリポトリと落ちる。それが、ちょうど、おたまじゃくしの形になって冷水の容器の中に、浮き沈みする。その形はおたまじゃくしと全く同じ。
それがすむと、冷水を捨てる。まるでおたまじゃくしの密集を感じさせる。これをさらに盛って、葱、ニンニク、唐辛子味噌、醤油、ゴマ油を混ぜて作った薬味をかけてたべるのであるが、その味は、どんぐりのムック、やえなりのムックとは、形態もさることながら、全然ちがったトウモロコシ特有の香ばしい味が舌先を誘惑するような気になる。

江陵(カンヌン)のオジンオスンデ(イカの腹詰料理)
「オジンオスンデ(イカの腹詰)」は、旧韓末時代から江原道漁村の船着き場あたりにたむろしていた濁酒屋から作り始められた評判の酒肴として庶民に愛好されたものである。この料理の作り方を見ると、まず、丸ごとのイカの足を抜き取って、内臟を処理して皮をむき、きれいに洗ってから、牛肉、イカの足、モヤシと白菜の葉をさっとゆでて、豆腐などの材料に葱、ニンニクのみじん切り、ゴマ塩とゴマ油、醤油などの調味料でよく和えて、それをイカの腹の中にいっぱい詰め込む。足のついていた部分に、中身がこぼれないように竹の串をさして、蒸したものを輪切りにして出す。これを酢唐辛子味噌につけて食べるのである。

雪岳山(ソラックサン)の珍味、(トットリムック)どんぐりムック
国立公園の雪岳山には、その秀麗な風景に劣らない珍奇な味をもった名菜が数多くある。峻険な山あいから、鬱蒼とした山林の渓谷をつたわって流れる水の味が清冽であるため、その水で育くまれた山菜は勿論、その水で作るたべものが独特である香ばしい。どんぐりムックは、山に豊富な材料があるため、一般庶民も誰かれなしに作って食べることができる。また、他のものを一緒に混ぜて食べるのではなく、ただ、塩とゴマ油だけを薬味として、かけで食べるのが本当の食べ方であるという。「トットリムック」の作り方は、まず、どんぐりの皮をむいたのを、手臼でひいてから粉にしたものを布袋の中につめて、水桶の中に約七、八時間浸けておき、その後、袋を手でもみ押さえを繰り返すと、桶の中に、どんぐり粉の沈澱(おり)物がためる。そして、うわ水を捨て、沈澱物に適当な水を加えて釜の中に入れ、火を焚き、大きなしゃもじで、かき回しながら糊状になるまで約三十分間ぐらい煮る。煮上った糊状の液体を木で作った流し箱の中に入れて水の中に一昼夜おいておくと、トットリムックの出来上がりということになる。これを煉瓦大に切って水の中に浸けておく。ちょうど豆腐屋の桶に入れてある豆腐スタイルのように…。

大関嶺(テクァンリョン)の黄太(ファンテ=スケソウダラ)
韓国の明太(メンタイ)は、捨てるところがないぐらい頭、目玉、肝、卵、腸などすべてが利用できる。ミョンテ(明太)は日本語でいうならば、「スケソウダラ」である。さて、「明太」こと、スケソウダラを水気なしにカチカチに乾かしたものが「北魚ブックオ」という名で呼ばれており、さらにその最上品を「黄太フゥンテ」と称している。干していない丸ことの明太一尾を土鍋に入れて、春菊、大根の薄きり、芹などの野菜を加え、ついでに豆腐の半丁でものせ、葱、ニンニク、唐辛子粉、唐辛子味噌を混ぜてブクブク煮て作った「メウンタン」は、寒い冬に体を暖めてくれる庶民の味として欠かせないスープである。北魚を砧打ちの棒で、頭から尾まで叩いて柔らかくした後、頭や尾、ヒレ、骨を取り去り、身を切り裂いて、サイの目に切って豆腐と葱をいれ、米のとぎ汁で煮て塩味仕立てにし、ゴマ油をかけた「トジュコル」の北魚湯はソウル名菜となっている。現在、韓国において明太から北魚に仕上げる過程で、最も気温的な条件に適した場所は、江原道の大関嶺(テカンリョン・標高856mの峠)一帯である。冷凍乾燥の過程を、冬の三ヶ月の間に繰り返しながら、形もよく、色も黄色い黄太となる。この地方で出来上がった「北魚」が、「黄太」として韓国で最高品として珍重されている。(黄太料理に関してのもっと面白く、詳しい内容はカテゴリのうち、”韓国名物料理”をご参考下さい)

洛山寺(ナクサンサ)のアワビ粥
昔から韓国全土でも指名度の高いのが洛山寺のアワビ粥である。韓国関東(江原道の東海岸)八景の一つである洛山寺を訪れる内外の観光客は、この地方の特味であるアワビ粥を味あうのを忘れない。洛山寺の後側の海岸ベリには、あわび粥屋の露店式バラックがずらりと並んでいる。アワビは普通の魚貝類に比べて蛋白質がより多く含まれており、脂肪質が少ないので、中年以上の健康食にもっともよいといわれている。昔から、「アワビは弱まった肝藏の機能を活発にさせる」と伝えられているばかりでなく、夜盲症によいといわれている。
アワビ粥の作り方は、先ず人数により量は違ってくるが、二人前の場合は、約一合の米をよくといで、暫く水に浸けておいてから、それを取り出して水を切っておく。アワビ三個をきれいに洗って薄く切り、鉄釜の中に(フライパンでよい)米とアワビを同時に入れて、ゴマ油を少したらし、しゃもじでかきまぜながら炒める(パチパチ音がするまで)、するとアワビから出た汁が米に染みて黄みを帯びてくる。これを、あらかじめ赤貝で作っておいた約一リットルの出し汁の中に入れて炊く。米粒がとけかかる頃にゴマ塩、ミジン切りの葱、ニンニクを入れて、さらにかきまぜながら、胡椒粉を少しふりかけて器に盛る。卵の黄身を一個上に落して出来上がりである。