慶尚道
料理の特徴 : 見た目にこだわらず、素朴で辛く味が濃いのが特徴です。
代表食べ物 : ビビムバ、アグチム、海鮮のパジョン、鶏スープ、貝のスープ、タラのスープ、テグタン、サメの串焼き、ホヤ貝の煮物、安東シッケ、カレイ水刺身 、トガニ湯 、ゴマの葉のキムチなど。

晋州(チンジュ)ビビンパは、花飯(ホァバン)とも呼ばれる
晋州ビビンパは、本来、唐辛子味噌を入れずに、辛くないように混ぜて食べるのが、他の地方のと異なっているという記録がある。そして、ご飯も、牛の頭を長時間煮て、浮いてくる脂気を取り去ったスープで炊き、調味料は、ゴマ塩とゴマ油だけで、ご飯の上にのせる和え物も、緑豆(やえなり)モヤシ、ホウレン草、ニラなどであるが、特に、大豆モヤシを使用しないで、代わりに、唐辛子の種を大豆モヤシのように(カイワレのような)育ててつくった唐辛子モヤシを使った。(晋州ビビンパに関してのもっと面白く、詳しい内容はカテゴリのうち、”韓国名物料理”をご参考下さい)

馬山(マサン)の鮟鱇(アンコウ)料理「アグチム」
「アグチム」の材料は勿論、鮟鱇であるが、これを開いて約一ヶ月干したものを、ダバコの半分ぐらいの大きさに骨ごと切り、鍋の中に入れて水を注ぐ。更に大豆モヤシ、蒙古醤(モンゴジャン)と称する馬山固有の味噌を入れて、さっと煮たててから、その中に、芹、葱、ニンニク、唐辛子粉をたっぷり入れて混ぜたあと、その中に、煮干しのダシ汁を入れて、もう一度煮てから深皿に盛って出す。食べた時の辛さは他何も感じないぐるい。

釜山の東莱葱煎(トンネ・パジョン)
釜山の東莱温泉に行けば、飲食店のメニューに「葱煎パジョン」が必ずのってある。作り方は「東莱パジョン」主役の葱の他に、もう一つの主材料としては、もち米の粉、上新粉、唐辛子粉を3,2,1の比率で混ぜて、水を注いでとき衣用とする。そして、油をひいた燔鉄(ボンチョル・少し大きめな長方形のふちのついた油焼き用の鉄板鍋)の中に、衣を丸く広がるように敷いて、その上に葱と芹を交互に形よく並べた後、むき身の蛤、エビ、胎貝などの海産物(季節によって蟹やカキなどを使う)と、柔らかくなるように包丁で叩いて細切りにした牛肉などを厚さが平均になるようにのせて、更にその上に衣になるとき汁を全体にかぶせるようにかける。葱や芹、海産物などのすべて生の材料が全部一様に熟するまでの間、高さのある鍋ぶたをかぶせて蒸らすように焼く。そろそろ、熟焼きした頃合いをみはからって、ふたを取り、前もって用意しておいが溶き卵を全体にかけて、「パジョン」がくずれないように裏返しにして焼いてから、大皿の上にのせて出すと香ばしい匂いが一面にただよう。東莱ならではお目にかかれない豪華なおかずである。

釜山の蜆汁(しじみじる)
釜山地方で、昔から庶民たちが最も好んで食べたものの中に蜆汁があり、十数年前までには、チェチクックという名の蜆汁売りのおばさんが、かめを頭の上にのせて「チェチクックサイソ(蜆汁を買わんか!)」と独特な釜山ナマリのかん高い声で売りして歩いていた、懐かしい光景が思い出す。蜆汁といっても、特に変わった調理法であるとか、特別な技術を要するものでもなく、蜆さえあればだれでも手軽に作れる簡単なものである。
ただ身の小さな蜆が乳白色の汁の中に入っていて、食べる時に塩と唐辛子粉を入れて自分で味加減をする。蜆汁は、蜆をきれいに洗ってから、真水の中に半日ぐらい放置しておいたものを釜の中のお湯が沸騰した時に入れて、蜆のふたが開いたころ、蜆だけ取り出して貝殻から身をはずして、それを再び煮汁の中に入れて煮ると出来上がり。この蜆汁は、特に酒を飲み過ぎた翌日の酔いざましに特効があうと言われている。

安東(アンドン)シッケ
韓国の飲食店で、特に韓定食や比較的高級の部類に入る一品料理を注文すると最後にデザートとして、砂糖水に浸かったような、ごはん粒の浮いているのみものが出る。これを、普通、「シッケ」または「カムジュ」と呼んでいる。安東式の「食醯シッケ」の作り方は、まず、米または餅米で炊いた少しかためのご飯の中に、生大根の千切りを入れ、これを細かくついて唐辛子の粉をまぶして全体が一様に赤味を帯びるまで混ぜておく。その中に、さらに、生姜を四、五枚ほどに切ってつぶしたしぼり汁をかけてから、適当な大きさのカメか壺の容器の中にねかす。その中に前もって用意した麦芽汁(芽汁の粉をお湯に浸けてこれをさらに、ふるいにかけた汁)を注いでから、その容器を密封して、部屋の中に三日ぐらい放置しておくと、発酵した飯粒が麦芽汁の表面に浮かび上がってくる。そうしたら、容器ごと外に出して、中身が凍る程度に冷やしておくと、安東食醯の風変わりな味に出来上がる。これは、旧正月の寒い時に賞味するのが身上である。最近では、冷蔵庫があるため、食醯愛好者は四季を通じて賞味している。

浦項(ポハン)のカレイ水刺身(カジャミムルフェ)
浦項地方で自慢する食べものは主として魚貝類の料理であるが、名菜という名のつくものがあるとすれば、「ムルフェ」(水に浮かべた刺身=水刺身)ということになる。本来漁船上で漁夫たちが一仕事終えて空腹を感じた時、獲ったばかりの新鮮な魚を刺身用に割き、丼の中に酢を二、三滴たらした水の中に入れて、そのまますするように食べたのが、「ムルフェ」の始祖であったという。いわば、彼等にとっては、お弁当やおやつ代わりの代用食であったようだ。この生臭い原始的な料理を、一般の人たちも何ら抵抗を感じないで食べられるように焼味の配合に工夫を凝らしてつくられたのが、現在の「ムルフェ」である。水刺身の作り方について述べてみると、「…ムルフェを作る材料は、水刺身としての味をいかしてくれるカレイか、ヒラメの生きのいいものを選ぶ。骨が多くて、かたい魚はこの料理に向かない。魚を刺身のようにそいでから、次に梨を千切りにする。そして、チシャを敷いた丼のような容器の中に、千切りと刺身を一緒に入れて、その上に唐辛子味噌を大さじ一杯のせる。この唐辛子味噌がムルフェの味の良し悪しを左右する役割を果たす。そして、黒砂糖を適当にふりかけ、さらに火であぶったノリをもんでふりかけたあと、青唐辛子と赤唐辛子の細切り、ゴマ、葱、ニンニクのみじん切り、おろし生姜、ゴマ油全部を混ぜ合わせる。夏は氷をのせ、そうでない時は水を少々入れる。これで完全な“浦項ムルフェ”の出来上がりとなる。この料理は宿酔をさます効果もあり、また手術直後の患者の栄養食としてもつかわれている…」と。

永川(ヨンチョン)を元祖とするトガニ湯(タン)
(トガニタン)は牛の関節にあるニカワ質の豊富な膝蓋骨で作ったスープのことである。本来のトガニ湯は、むかし、両班(ヤンバン)の家で補食として煮て食べた珍奇な料理であったといわれる。それも、このスープを作るのに小さな壺の外側に粘土をぬって、トガニを壺の中に入れたあと、水を注いで漢方薬を煎じるように気長に煮てから、塩胡椒で味をつけて食べたそうで、特に産後の婦人の補食として効果をあげていたといわれている。
トガニ湯の本来は永川地方が元祖だといわれているが、ソウルをはじめ、たいていの地方でこれを売っている。
その作り方を紹介してみる。肉屋で集めてきた筋、乳房、膝の骨などの脂を取り除いて、これらを約一時間水の中に入れておいてから、血などを洗い落して、大きな釜の中に入れて水を注ぎ、最初は強火で一時間位ぐらぐら煮たあと、徐々に火勢を弱めながら約二時間むらすように放置する。そして、大きな木のシャモジで釜の底にこげめをつかないように継続してかき廻した後、鉄の穴あきシャクシで煮えた具の塊を調理台に取り出して包丁で食べやすい大きさに切ってから、釜の中に残っている煮汁の浮いた脂を取り除いて、調理台の具を再び釜の中に入れ、お湯を加えてからもう一度煮始める。こうして出来たトガニ湯に塩胡椒で味をつけて出すが、別にニンニク、葱、唐辛子粉で練った薬味をそえる。寒い冬には、冷めたこの汁がちょうどトコロテンのようなゼラチン質になるのをキムチの葉っぱに包んで食べるように客にサービスする。トガニ湯はなんといっても、カクトゥギをスープの中に入れて食べるのが常道。それも少し時間のたった酸っぱい味のするものがトガニ湯の味をぐっと美味にしてくれる。