全羅道
料理の特徴 : 他の地方に比べ、料理の種類が非常に多く、見た目も華やかである。さまざまな塩辛を利用した深みのある辛い味の食べ物が特徴。
代表食べ物 : 洪濁三合、全州ビビンパ、鰍魚湯、手長蛸の丸呑み刺身、エイの蒸し物、霊光(ヨングァン)クルビ、モヤシご飯、うなぎ汁、鶏料理、タコの焼き物、龍鳳湯、せりの巻物、紅酒、芥子菜キムチ、ウナギ蒲焼、全州韓定食、淳昌唐辛子味噌 など。

伝統の味、黒山島(フクサンド)の味
濁酒(ドブロク)につきものの「 洪濁ホンタック」と「三合サムハップ

エイのことを韓国語で洪魚(ホンオ)という。黒山島の洪魚料理は、刺身、煮物などいろいろあるが、特に「ホンタック」といえば、「洪魚ホンオ」の刺身と「濁酒タックジュ」(ドブロク)の、合成語であるが、この刺身を食べる時は、必ず濁酒を同伴しないと具合が悪いからである。適度に発酵させた洪魚の刺身を口の中に入れると、ツーンと刺す辛い感じがするが、この時、濁酒を口に含んで一緒に噛むと、えも言われぬ香ばしい独特な味がする。
また、黒山島には、「洪濁」という造語があると思えば、「三合サムハップ」というのもある。「洪濁」を食べるのが嫌いな人は、この「三合」なら問題ないだろう。「三合」というのは、「洪魚膾」(ホンオの刺身)と、豚肉(煮た)の切身と、キムチを重ねたサンドウィッチ状の料理名である。

木浦(モックポ)の生きた手長蛸の丸呑み刺身(・生絡蹄膾・センナックチフェ)
丸呑みの刺身用に使われている蛸は、「セバルナックチ」といわれる細長い足の小型の蛸で、しかも、その食べ方たるや驚きの一語につきる。まず、片手で、蛸の頭(本当は腹)をつかみ、さらに、片手の親指と、人差し指と中指の三本で、蛸の足を二、三回しごいてぬるぬるした粘液を取り去って、酢唐辛子味噌の薬味かゴマ油をつけて頭から噛みながら食べる。上手にしないと、蛸の足が口や鼻の穴にまで入り、ぴたっとくっついて離れないので、それこそ悪戦苦闘…。ひどいめに会うのがいやな人は、適当な大きさにぶつ切りして、ゴマ油を二、三滴たらしたあと、口の中にいれて、ソバやうどんを食べるみたいに、スルスルと呑み込む方がよい。

「霊光(ヨングァン)クルビ(石首魚)」は、飯どろぼう
ヨングァンクルビの加工過程を見ると、霊光法聖浦の七山灘の漁場で獲れた石首魚(イシモチ)は腹に卵がいっぱい入っていて、見るからに肥えて脂がのり黄金色をしている。これをオサリ(産卵前に獲ったイシモチのこと)という。一尾一尾丁寧にこのオサリの鰓(エラ)の中に塩をつめこんで、高さ一メートル以上もある大きな水瓶の中に入れ、約三日間、重石をのせておいてから、体内の水気がぬけると、これを藁でなう縄の間に挟んで十匹ずつ一吊りにしたものを、海岸べりに建ててある高い乾燥台に掛けて、約十日から二週間、海風にさらしながら干ぼしにする。こうして出来上がったのがいわゆる本場の「ヨングァン・クルビ」である。

光州(クァンジュ)・證心寺(チュンシムサ)の鶏料理」
光州無等山の證心寺入口の渓谷にそうて六十余軒の鶏料理の店がたむろしている。ここの鶏料理が広く有名になったのは鶏料理の順序がほかのところと変わっているからかもしれない。鶏一羽と焼酎を一本注文すると、まず、最初に出てくるのは、コリコリした噛みごたえのある珍味の「鶏の足の和え物二本」と「砂肝の和え物一つ」です。
この前菜の和え物が本料理よりも人気があるらしい。このつぎは、鶏本体の蒸し煮料理が出てくる。この料理は鶏の肉が柔らかすぎたり、また、固く生臭い感じのしないようにするために、煮る時間をうまく調節することによって、鶏の原味をそこなわないように柔らかく煮るのが秘訣でそうである。お膳には、白菜キムチ、水キムチ、名物のコドルペギキムチが並べられている。これらのキムチをつまみながら、一緒に、蒸し鶏を食べると、シツコさも消えてしまい、さっぱりした気持ちのよい味になる。

光州(クァンジュ)で人気のある龍鳳湯ヨンボンタン」

珍島(ジンド)神秘な海の現象と紅酒
韓国南端の珍島が誇るだけあって、紅酒は、その鮮艶な光沢から伝統的な銘酒である。しかも、韓国の古来酒の中で、紅酒のような味・香・光沢など酒としての三要素そすべて具備した美酒は他にないといわれている。正直な話、韓国の伝統酒のなかで、光沢がこれほど誘惑的な酒に出会ったことはない。紅酒の製造法の由来については、正確なものが伝えられていないようであるが、島の故老たちの話によれば、百年前頃から造られてきたと伝えられているといる。それは、高麗朝以来、珍島は政治犯の配流の地であって、数多い両班(ヤンバン)たちがこの島に流されてきていたのだが、これらの流人たちの胸の内には「恨ハン」とウップンに悲憤慷慨の日々を送った。そして、配流生活のせつなさを酒によってまぎらわしたことだろう。彼等は珍島に無尽藏に生きている薬草の「芝草チチョ」を使って真っ赤な酒を造ったのだという。そして、血の色に染まった酒を飲みながら、捲土重来を夢見ていただろうと、故老だちは語っている…。

九津浦(クジンポ)のウナギ蒲焼料理
栄山江(ヨンサンカン)のほとりにある九津浦はウナギの棲息地として絶好。ウナギ焼を美味しくしている鍵は、蒲焼と同じようにタレにある。韓国でテリというのは日本のタレがなまったものである。タレの作り方は、ウナギ汁のダシである煮汁の中に醤油、砂糖、化学調味料、それに韓国酒、ニッキの粉まで入れて煮立てたものである。店によっては砂糖の変わりに水飴をいれてとろみをつけて仕立てるところもある。ウナギクイは、開いて適当な大きさに切ったウナギを炭火にのせた網の上で焼くのだが、まんべんなくタレをつけては何度も焼く。焼きあがった頃、黒砂糖をウナギの上にパラパラふりかえて出す。

ビビンパは、全州(ジョンジュ)の代名詞
本場の全州のビビンパのうち、全州でも名の通っている「中央会館」のビビンパを紹介することにする。韓国の飲食店では、一品料理を注文すると、必ず、七、八皿の総菜がサービスとして無料でついて出る。キムチ、野菜の和え物、蟹醤(蟹の唐辛子を混ぜた醤油漬け)、塩辛、卵焼き、その他である。これはいくら食べてもお代わりをくれる。さて、注文のビビンパが出されたが、その量の多いことには驚いた。小さな洗面器大の容器の中に、唐辛子味噌で赤く染まったご飯が盛られ、その上に、色とりどりの混ぜるための具がのせられているのには二度びっくり。
(全州のビビンパに関してのもっと面白く、詳しい内容はカテゴリのうち、”韓国名物料理”をご参考下さい)

全州(ジョンジュ)の韓定食」は、朝鮮時代の固有の料理法を守っている
韓国伝統料理の数々を目の前にして一度にこれらを味わってみたいと思ったら、韓定食屋を探して行くに限る。いうなれば、韓国固有の調理法による殆どの料理が卓上せましとばかり、ぎっしりと並べられているからだ。
全州は朝鮮時代の両班(ヤンバン)風の粋なところを引き継いで固有の料理法を守っている。全州の道庁前にて数十年間、韓定食の伝統を守り続けているある有名な料理屋のお膳をのぞいてみることにする。運ばれてきた卓上には、酒杯は勿論、大皿、小鉢、土鍋、汁碗、小皿、薬味碗などの食器に規模よく盛り付けられている料理の数が三十余、ざっと眺めただけでも、さすが、むかしの両班たちが食べたであろうと思われるぐらい古式豊かな感じのする豪華なものである。(全州の韓定食に関してのもっと面白く、詳しい内容はカテゴリのうち、”韓国名物料理”をご参考下さい)

南原(ナムウォン)の鰍魚湯(どじょうじる)
どじょうは胃を温め、血行をよくし、骨格や関節の病気の人によいと言われているものである。南原鰍魚湯で有名な川巨里のセジップ(新しい家という意味)、ここ本場の、どじょう汁の料理法を紹介する。どじょう汁の料理法は二つある。山間の淡水で獲れたどじょうと、平野部のかわでも濁水のなかで獲れたどじょうの二種類があるが、作り方は、牛肉を細かく搗いてどじょうに混ぜて作る方法と、どじょうだけをつぶして唐辛子味噌で調味したものの二つの方法である。「セジップ」の女主人の話では…、獲りたてのどじょうを冷たい水の中に入れて、その上にひとにぎり程の塩を撒いておくと、どじょうはおう吐作用を起こして、ぐんなりなってしまう。それをきれいに洗ってから、煮えたぎっているお湯の中に入れる。暫くして、どじょうをざるの中に入れて水気を切ってから、まな板の上に乗せ、包丁で原型がなくなるまでたたきつぶしてしまう。この方法はどじょうのもっている臭気をぬくためである。この仕事が終わると、いよいよ本格的などじょう汁の調味に入るのである。牛肉のつぶしたものと混ぜる、または、季節の野菜などを入れてみるとかして、唐辛子味噌を入れるなり、さらには、何年もたった醤油だけを入れるなりして、チョン・ピイ(全羅道のみに産するといわれる山椒の一種)を入れ、最後に紫蘇の葉っぱをきざんで入れて仕上げる。

淳昌(スンチャン)の唐辛子味噌(コチュジャン)
韓国では、その年の醤のあじの良し悪しによって幸運と災害に出会うといわれてきているため、韓国の家庭主婦たちは、醤造りに対して特別に気を使ってきたし、また、神秘に考えてきた。こういう思想から、醤造りについても、吉日と忌日を選び、いろいろなタブーを守ってきた。それほど、神経をつかって、醤を仕込むことによって、味がよくなるということから由来したものだろう。 伝統ある淳昌コチュジャンなればこそ、全国の名菜というたわれる料理の中の薬味を説明する料理師は、必ず「淳昌コチュジャン云々」と強調しており、かていの主婦たちも、「これは淳昌から送られた本物の淳昌コチュジャンです」とか、わざわざ淳昌で買ってきた本場コチュジャンでなくても淳昌産というと、本当に一味ちがった佳味を覚えるのだから不思議である。(淳昌コチュジャンに関してのもっと、詳しい内容はカテゴリのうち、”韓国料理の薬味”をご参考下さい)